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 衣吹(いぶき)はつらつら考える。じつのところ私は前から知っていたよ、あんたが結婚式場の格式やらブランド物の衣服をどれだけ持っているかより、人の心のありようをよほど気にする(たち)だってのは。  その純粋さは(ごう)が深いよね。だってあんたはただ物質的に豊かになれても満足できない。精神まで深く同調できる相手を欲し、愛する女だから。  もしかしたら風祭はすべてわかっていたのかもしれない、と衣吹はうっすら思う。  花南が自由と孤独を愛する自立した女なのも。初めて好きになった相手をいまだに(おも)い続けているほど(いち)()な性格なのも。  花南とはそういう不器用で(いさぎよ)い女だ。だからこそ風祭は(よう)()(しゆう)(とう)に逃げ場を(ふさ)ぎ、恋人の身も心も手に入れようとした。それくらいにはあの男は地頭(じあたま)がいい。花南を好きという気持ちにしたって本物だろう。――ただ人生なんて試練の連続だ。完璧にプランニングしたからって、思いどおりには進まないのだ。 「花南(かな)はちょっと、思いつめすぎなんだよ」  (めん)(どう)(くさ)いけれどもしかたがない。ここは真の友情力ってのを(はつ)(げん)させる時だ。衣吹(いぶき)(ごう)(ぜん)(うで)()みして言ってやる。 「わけもわからず不安ばっかり(ぼう)(そう)させるな。まず自分がちゃんと立っていられなけりゃ、誰かを(ささ)えることなんてできっこないでしょ」 「あ……」
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