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「しかもあんた、結婚式費用を怪しいサイトにふりこんだんだって?」
「あはは、やだー、太一君たらそんな噂まで広めてるのー、ひっどーい」
とたんに花南はけたたましく笑った。
「なんだ。もしかしてデマだった?」
相手がけらけら笑うので胸を撫でおろしたせつな、ふにゃりと花南の首が横にゆれる。
「ううん、本当だよー」
「……は?」
「大丈夫、あたしの稼いだお金だけだから」
は、と衣吹はまた言った。なんだろう、おかしいな。今日は花南の話す内容がまるでわからない。大丈夫ってなにがだ。
「いくらよ。いくらふりこんだの」
「えーと、とりあえず百万くらい?」
心臓がぎゅっと縮まっていく。とりあえずって。それは巷でよく聞くナントカ詐欺じゃないのか。
「……で風祭さんは、なんて?」
かわいた声しか出なかった。なのに相手は淡々とグラスをかたむけるばかりである。
「ちょっと花南、私を信用してよ。太一にも誰にも言わないから。つーか最初からあいつにはなに一つ話すつもりはないが」
「……亮は」
「うん」
「めっちゃ怒ってた。怒鳴られて殴られたよ、暴力振るうなんて最低だよねぇ」
まるで他人事みたいな口調だった。
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