Act 2 : 恋の始まり?

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「正直、BL営業の指示を出してからも、二人の距離感はこれまでと全く変わらない。面白みがないんだ、それだと」 「……じゃあ、もっとくっつきますか? 今日の収録でも、一応絡みはしましたけど」  今日は個人撮影なのに、絡み? とユノは思ったが、すぐにあのカトクのことだと思い当たった。なるほど、ああいうのもファンは喜ぶのか。 「ただくっつくんじゃなくてね、もっとこう……『恋の始まり』みたいな雰囲気が欲しいんだよ」 「恋の始まり?」 「そう。甘酸っぱい、見ているほうが恥ずかしくなってはわ〜ってなるような雰囲気、あるじゃないか。ああいうのが欲しい」  中年のはわ〜はなかなかの破壊力があるが、それへのツッコミはさすがに相手が目上の人すぎるのでやめておくことにする。 「二人は付き合いたての恋人、という設定で行くつもりだから。二人の演技力にかかってるよ」  本部長の言葉が真剣味を帯びる。もっとも、真剣味を帯びても、内容が内容なので、いまいち決まらなくはあるのだけれど。 「甘酸っぱい、『恋の始まり』の雰囲気ですね……わかりました」  ユノの隣に立つ、ユノの「付き合いたての恋人」は、頷きながらゆっくりと口角を上げた。  ジュウォンの史上最高に胡散臭い笑顔に、ユノはここ最近感じることが多い「嫌な予感」を感じた。
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