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眠気が残るユノの動きは遅い。鏡に映る、いつもは丸く大きな目は、今は眠そうに半分閉じている。
とりあえず最低限の準備だけして、染め直したばかりのぼさぼさの黒髪をバケットハットに押し込んだ。途中から目が覚めてきて、急いで決まった組み合わせの服をばっと着る。
時間ギリギリで慌てて宿舎を出ると、いつもの送迎車の中にいるのは運転してくれるマネージャーと、そして、起き抜けとは思えないほど整った顔をした、同じグループのメンバーがいた。
「え、ジュウォニヒョン? 何してんの?」
ジュウォンが一緒に来るというのは聞いていない。ユノは車に乗り込みながらジュウォンに尋ねた。
「あれ、スホヒョン言ってなかった? はーほんとに、ダメなヒョンだね」
ジュウォンはダメだダメだと首を振るだけでどういうことなのか全く説明してくれない。スホよりよっぽどダメなジュウォンのことは早々に諦め、ユノがマネージャーを見ると、マネージャーは表情を変えずに「会社に呼ばれたのは二人ともなんだよ」と教えてくれた。
ジュウォンは、グループ内で、どころかユノの周りにいる人の中で最も仲がいい人。
気も合うし、ふざけ合うこともできれば真剣な話もできる、一緒にいて不思議なほど居心地がいい人だ。
ただし、顔が良くて口が悪いので、ややむかつく存在でもある。
「お前なんで真剣な顔してんの? 誰? キムユノはどこ行った?」
「ヒョン安定にうざい」
見慣れた道を車に揺られながら、ユノはなんとなく嫌な予感を覚えた。
「……生命の危機とまでは行かない感じだけど面倒事か嫌な事を押し付けられる予感がしてる」
「奇遇、俺も」
二人の数ある共通点の一つが、かなり勘が鋭いことだ。
「そもそも事務所からの呼び出しで、良いことだった時のほうが少ないよな」
車が、大きく揺れた。
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