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「やっぱりさ、事務所としてはもう少し知名度とかもどうにか上げられないかな、って思うんだよ。でも、曲をヒットさせるのは簡単じゃないし、ポイントダンスとかで流行を狙うっていうのも君たちのスタイルじゃない感じするでしょ?そこで、BL営業っていう案が出た訳なんだけど」
BL営業。わざとメンバー同士でお互い付き合っているように振る舞い、ボーイズラブが好きな人々もファン層に取り込むための演技をする、そういう営業のこと、だろう。
ほとんどのグループは割と自主的にやっているような部分があると思う。スキンシップをするとわかりやすく歓声があがるのは正直面白いし、ユノ自身、自分とメンバーが、あるいはメンバーとメンバーが触れ合うと喜ぶプルムンがいることは知っている。そしてそのプルムンがかなり多いことも。
でも、こうやって改めて頼まれるとなんだかちょっと。
「なんで俺たちなんですか?」
ユノがいろいろ考えを巡らせている間に、ジュウォンが本部長を見つめて聞いた。
「いやさ、CRESCENTの中でいちばんスキンシップが多い、というか距離が近いのは二人だから、今から始めても不自然にならない気がして」
それは確かにそうかもしれない。グループ内でもユノとジュウォンは距離が近いほうだし、気づけば隣にいる。でも、他の人たちじゃだめだ、という程にユノたち二人が付き合っているように見えるとまでは思えないのだけれど。
またしてもユノが考え込んでいたら、本部長がユノの考えを見透かしたように言った。
「それに、二人ともわりと演技派でしょ?他の人でもいいんじゃないかっていう案も出たんだけど、スホはリーダーで既に重責があるし、リアムは自由人すぎて指示なんて聞いてくれる訳がないし、ホジュンは嘘がつけないし」
そう言われてしまうと弱い。元々ユノは、無自覚なお人好しだ。頼まれると断れない性格で、多少抵抗はしてみても、頼まれた時点で結果など見えている。
「お願いだよ、二人にしか頼れないんだよ……」
二人のことを潤んだ上目遣いで見つめてくる本部長、52歳既婚。絵面が濃い。
どうしよう、ジュウォンのことはもちろん好きだ。でも、恋愛感情みたいなものは一切ないのにプルムンを騙すようなことなんてしたくない。だけど、本部長の頼みをすげなく断るのもあまりに冷酷なんじゃないか。
ユノはまたぐるぐると悩んだ。でも、ユノの隣に立っているイケメンは、もうさっさと結論を出していたらしい。
「わかりました、いいですよ」
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