Act 1 : BL営業、開始

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「ヒョン大丈夫ですか……? 鼻血出てる」 「ごめん、全然平気、持病の発作みたいなもんだから」  一般的に、持病の発作は平気とは呼ばない。 「え、BL営業ってつまり、二人がカップルのふりするってことだよね?」 「はい」 「っ……!」  マネージャーは涙目で天を仰ぐ。ユノは本能的な恐怖に包まれた。言ってみれば、比較的まともな知人が、怪しげな新興宗教にドハマりしている様を見てしまった感覚、というような感じか。 「神様ありがとう、この仕事やっててよかった……」  マネージャーはぼそぼそ何かを言っているけれど、口の中だけで言っているのでユノには聞こえない。 「ヒョン今なんて言いました?」 「ううん、なんでもないよ! 頑張ってね二人とも、俺は応援してるから!」  これまでに見たことのないほどの明朗快活な笑顔で、マネージャーは言う。 「さあ、宿舎ついたよ! 頑張ってね!」  車が走り去っていくのを見ながら、ジュウォンに「マネージャーヒョン、どうしたんだろうね」と言うと、なぜか苦笑で、 「まあ、なんとなくそうかとは思ってたんだけど」 と返ってきた。 「え、どういうこと?」 「教えなーい」 「なんでよ!」 「どうせお前もいつかは気づくだろ」  いいや、見当もつかない。ユノには到底わかる気がしなかった。
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