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「ヒョン大丈夫ですか……? 鼻血出てる」
「ごめん、全然平気、持病の発作みたいなもんだから」
一般的に、持病の発作は平気とは呼ばない。
「え、BL営業ってつまり、二人がカップルのふりするってことだよね?」
「はい」
「っ……!」
マネージャーは涙目で天を仰ぐ。ユノは本能的な恐怖に包まれた。言ってみれば、比較的まともな知人が、怪しげな新興宗教にドハマりしている様を見てしまった感覚、というような感じか。
「神様ありがとう、この仕事やっててよかった……」
マネージャーはぼそぼそ何かを言っているけれど、口の中だけで言っているのでユノには聞こえない。
「ヒョン今なんて言いました?」
「ううん、なんでもないよ! 頑張ってね二人とも、俺は応援してるから!」
これまでに見たことのないほどの明朗快活な笑顔で、マネージャーは言う。
「さあ、宿舎ついたよ! 頑張ってね!」
車が走り去っていくのを見ながら、ジュウォンに「マネージャーヒョン、どうしたんだろうね」と言うと、なぜか苦笑で、
「まあ、なんとなくそうかとは思ってたんだけど」
と返ってきた。
「え、どういうこと?」
「教えなーい」
「なんでよ!」
「どうせお前もいつかは気づくだろ」
いいや、見当もつかない。ユノには到底わかる気がしなかった。
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