鬼神村の言い伝え

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和泉は鬼神村で一番の別嬪だった。 目があったものを虜にしてしまう、まるで雪国に現れると言われる白肌を持つ美しい女の怪異のようだった。そして和泉は巫でもあった。 巫__かんなぎ__神慰ぎ。 巫という役は神の憤怒を慰める、という役割を持っていて、霧襲村(きりがさねむら)が鬼神村、と名前を変えるずっと前から大々和泉の家系__白神家の娘が務めていた。 昔、村の開発のために鬼神の社を切り開こうとしたのも白神家だ。その報いとして白神家の先祖は鬼神と約束を交わしたのだ。 それが“十年に一度、若い生娘を贄として捧げる”というものだった。 そして特に鬼神が好んだのは美しい娘だった。どうやら美しい娘ほど肉が美味だから、と言われているらしい。 白神家の娘が贄として捧げられているのも、 別嬪が多いからだとも言われている。
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