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ライターを胸ポケットにしまって、体育館に、もたれ掛かる。
タバコをゆっくり吸いながら空を見上げると、秋晴れの青空が広がっていた。
タバコを十分、堪能したところで、そろそろいっかと思って教室へ戻る。
と、その途端にクラスメートから、「姫!」って声が聞こえてきた。
そんな俺の元に、鈴木と香澄がやって来る。
「千夜くん、文化祭の出し物が決まりました」
「そうか。まあ、せいぜい頑張ってくれ」
「千夜くんも出るのよ」
うるせー2人に捕まっちまったな。
俺は構わず、自分の席に着いた。
だが、鈴木と香澄は尚もやって来る。
「言っとくが俺は出ねーぜ」
「そうですか。出し物は『劇』なんですけどね」
劇、ねぇ…。
「それも男子が女装して女性役をして、女子が男装して男性役をするのよ」
だから何なんだ。
「舞台は中世ヨーロッパをイメージしてます。そのヒロインの王女役に千夜くんが選ばれました」
「へいへい。…は?」
一瞬、我が耳を疑った。
鈴木も香澄もニコニコしてる。
黒板を見ると、確かに出し物は劇。
それも『王女役…千夜保』と書かれていた。
「千夜くん、頑張ろうね」
「エスケープして、いらっしゃらなかったみたいでしたので満場一致で決まりました」
何だって?
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