文化祭に向けて

3/10
前へ
/61ページ
次へ
「冗談じゃねー!」 俺は思わず立ち上がった。 「はい。千夜くんの仰る通りです。冗談ではありません。真実です。配役を決める時、その場に居なかったのが悪いんですよ」 「そういう意味で言ったんじゃねー!王女役は、鈴木が演じれば良いだろ」 「僕は監督兼脚本係です。じゃあ、お互いの役目を交換しますか?」 鈴木の奴…俺には出来ねーと思ってワザと言ってやがるな。 だが、実際、劇での台詞や人物の動きに立ち位置…。 その他諸々、俺には務まりそうにねー。 その時、黙って俺等の会話を聞いていた香澄が言った。 「千夜くん。王女の相手役の騎士役は私なんだけど…それでも嫌…?」 香澄の言葉に黒板をよくよく見ると、確かに主人公の騎士…ナイトハルト役の欄には『諸橋香澄』と書かれていた。 「嫌なものを無理に演じさせても良い劇には、ならないでしょうからね。僕の役目は別の人に譲って王女役は僕が、なりましょう」 「ちょっと待て。満場一致で決まった事だろ。確かに話し合いをサボってた俺も責任を取らないといけねーしな。潔く王女役を引き受けるぜ」 ところが、香澄の表情は冴えねー。 「私の相手役をしたいって素直に言ってくれたら良いのに…」 そんなの暗黙の了解だと思ってた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加