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第十一話 庄司エンタープライズ
庄司エンタープライズ本社ビルで、“庄司 弥”に会うに差し当たり、受付でセキュリティチェックを受ける美雪。
国際企業のCEO兼社長と直接会うというのは、そう簡単なことではない。
その命を狙わない者がいないとは言えないからだ。
実際にそんなことが起きればどの程度の社会的影響が起きるかは想像もつかない。
大企業のアクシデントは、その会社の財務的損失だけではなく、株価の下落により投資家や株主に損失を与え、ブランド価値の低下による顧客離れなど、方々で深刻なダメージを負けることは必至。
それは最終的に日本経済へのダメージとなってしまう。
とは言え、久しぶりでこそあるが、美雪がここに来るのは実は初めてではない。三年ぶりくらいだろうか。
受付嬢は、その時とは変わっており、美雪も今の受付嬢と会うのは初めてだった。
以前の“顔パス“ ”だったことは、内緒の話だ。
身元確認のあと、美雪は、社長室までは警備員の男性に案内される形となる。
その警備員も、外部契約ではなく、自社のセキュリティーサービスで、見るからに屈強そうだ。
エレベーターホールからガラス張りのエレベーターに乗り込む。
動き出すエレベーターが、徐々にビルの高さを感じさせ、加速感が身体を包み込んだ。
階数が上がるにつれ、周囲の景色が一段と遠くなり、都会の喧騒が遠ざかる。
下を見ると、人がどんどん点になっていくのが見えた。
「………」
エレベーターが停止し、ドアが開くと、そこは最上階フロア。
人影はなく、廊下に敷き詰められた絨毯マットを踏む足音が静かに響く。
ここは一般社員が入れるフロアではないのだ。
警備員は、少し進んだ先にあるシルバーのポール状のセキュリティー装置に、カードをスキャンさせた。
この廊下を、セキュリティーカードなしで通過すると、ビル全体にアラームがなり、主要な扉は自動ロックされ、武装した警備がやってくる仕組みになっている。
ポールを通過し、少し進み、大きな扉の前に立った警備員は、強くノックをした。
コンコンッ…
「はーい、どうぞぉ」
間を空けず、扉の向かうから気軽な感じの男性の声がした。
警備員は扉をゆっくり開けると、中へ入り一礼する。
「社長、益田様をお連れしました」
警備員はそう告げると、美雪を部屋の中へ入れた。
豪華な内装で彩られ広々とした社長室。何より一面大きな窓ガラスで明るく、そこから見えるビル群は抜群の景色と言えた。
デスク周りには最新の大型のモニターやシックなノートパソコンが置かれているのが目に入る。
その横にもデスクがあり、秘書の若い女性がいる。美人で仕事の出来そうな女性だ。
そして壁に絵画なども飾られているが、一際目につくのが神棚だ。そこに、一本の“刀”が飾られている。
鍔が付いており、御神刀ではない。
しかし、きちんとした名刀であり、その名は“我妻龍徹”。
美雪は、この刀に命を救われた過去があり、神棚を見つめると一瞬目を瞑った。
「…君、ありがとう。扉の外で待機してていいよ」
この会社のCEO兼社長の庄司 弥は、警備員にそう告げると、警備員は一礼をして、廊下に出て、扉を静かに閉めた。
「ご無沙汰してます」
美雪は、弥にそう挨拶をした。
弥は、ノーネクタイでありながらも、洗練されたスタイリッシュさを纏っていた。
ワイシャツの襟元はしっかりと整えられ、胸元のボタンが上品な輝きを放っている。そして、どこか自信に満ちた笑顔を浮かべ、品のある立ち居振る舞いだ。
その容姿は、社会的に特別な存在であることを醸し出しているようだった。
「ああ、久しぶりだね、美雪さん」
そんな弥たが、優しい笑顔で美雪に挨拶した。
秘書の女性は、その様子に驚いた。
それもそうだろう。
弥は常に冷静で厳格なイメージがあったが、現れた“この若い女性”との関係では、まるで別人のように明るく庶民的な一面を見せたからだ。
国際企業のCEO兼社長である弥と、見るからに庶民的な美雪。不釣り合いな二人に見えるが、その間には間違いなく信頼と親しみがあることが理解出来た。
「紹介するよ、秘書の“笛木悠子”君だ。笛木君、こちらは私立探偵の“益田 美雪”さん」
弥に紹介された笛木と美雪は、互いにお辞儀をした。
「ところで来てすぐ何だけど、美雪さん、お昼食べた?」
何の前触れもなく、弥に昼食の質問をされ、美雪は間を空けた。
「……いえ」
首を横に振る美雪を見て、弥は笑みを浮かべる。
「そりゃいい。俺もまだでね。一緒にランチでも食べないか?」
美雪は苦笑した。
「え?あー…でも、その、あなたに話があって来たので」
「話?なら、ここで食おう。話は食べながらでも出来る」
「…でも弥さん忙しいんじゃあ?」
「ああ、忙しいからこそ、食事はしっかり取らないと、だ。笛木君、ビル内のファストフード店で、適当にハンバーガーを買ってきてくれ」
笛木は、「分かりました」応えると、一礼をして社長室を出て行った。
「…え、弥さん、ハンバーガーとか食べるんですか?」
美雪は目を丸くして驚きの表情を浮かべた。
「おいおい、僕を何だと思っているんだ美雪さん。ハンバーガーは誰でも食べるだろ?」
庄司 弥”に会うに差し当たり、受付でセキュリティチェックを受ける美雪。
国際企業のCEO兼社長と直接会うというのは、簡単なことではない。
その命を狙わない者がいないとは言えないからだ。
実際にそんなことが起きればどの程度の社会的影響が起きるかは想像もつかない。
大企業のアクシデントは、その会社の財務的損失だけではなく、 株価の下落により投資家や株主に損失を与え、ブランド価値の低下による顧客離れなど、方々に辺り深刻なダメージを負けることは必至。
それは最終的に日本経済へのダメージとなってしまう。
とは言え、久しぶりでこそあるが、美雪がここに来るのは初めてではない。三年ぶりくらいだろうか。
受付嬢は、いつの間にか変わっていたようで、美雪も会うのは初めてだった。
以前の受付嬢の時は、顔パスだったことは、内緒の話だ。
その時はまだ脇に拳銃の入ったホルスターはなかったが。
身元確認のあと、美雪は、社長室までは警備員の男性に案内される形となる。
その警備員も、外部契約ではなく、自社のセキュリティーサービスで、見るからに屈強そうだ。
エレベーターホールからガラス張りのエレベーターに乗り込む。
動き出すエレベーターが、徐々にビルの高さを感じさせ、加速感が身体を包み込む。
階数が上がるにつれ、周囲の景色が一段と遠くなり、都会の喧騒が遠ざかる。
下を見ると、人がどんどん点になっていくのが見えた。
「………」
エレベーターが停止し、ドアが開くと、そこは最上階フロア。
人影はなく、廊下に敷き詰められた絨毯マットを踏む足音が静かに響く。
ここは一般社員が入れるフロアではないのだ。
警備員は、少し進んだ先にあるシルバーのポール状のセキュリティー装置に、カードをスキャンさせる。
ここをそのカードなしに通過すると、ビル全体にアラームがなり、主要な扉は自動ロックされ、武装した警備がやってくる仕組みになっている。
ポールを通過し、少し進み、大きな扉の前に立つと、警備員は強くノックをした。
コンコンッ…
「はーい、どうぞぉ」
間を空けず、扉の向かうから気軽な感じの男性の声がした。
警備員は扉をゆっくり開けると、中へ入り一礼する。
「社長、益田様をお連れしました」
警備員はそう告げると、美雪を部屋の中へ入れた。
豪華な内装で彩られ広々とした社長室は、一面は大きな窓ガラスで明るい。
デスク周りには最新の大型のモニターやシックなノートパソコンが置かれているのが目に入る。
その横にもデスクがあり、秘書の若い女性がいる。
そして壁に絵画なども飾られているが、一際目につくのが神棚だ。
そこに、一本の“刀”が飾られている。
鍔が付いており、御神刀ではない。
しかし、きちんとした名刀であり、その名は“我妻龍徹”。
美雪は、この刀に命を救われた過去があり、神棚を見つめると一瞬目を瞑った。
「君、ありがとう。扉の外で待機してていよ」
この会社のCEO兼社長の庄司 弥は、警備員にそう告げると、警備員は一礼をして、廊下に出て、扉を静かに閉めた。
弥は、ノーネクタイでありながらも、洗練されたスタイリッシュさを纏っていた。
ワイシャツの襟元はしっかりと整えられ、胸元のボタンが上品な輝きを放っている。
どこか自信に満ちた笑顔を浮かべ、品のある立ち居振る舞いで、その容姿は特別な存在であることを醸し出していた。
「久しぶりだね、美雪さん」
そんな弥たが、優しい笑顔で美雪に挨拶した。
秘書の女性は驚いている様子だ。
それもそうだろう。
弥は常に冷静で厳格なイメージがあったが、現れた“この若い女性”との関係では、まるで別人のように明るく庶民的な一面を見せたからだ。
国際企業のCEO兼社長である弥と、不釣り合いに庶民的な美雪だが、二人の間には間違いなく信頼と親しみがあることが理解出来た。
「紹介するよ、秘書の“笛木悠子”君だ。笛木君、こちらは私立探偵の“益田 美雪”さん」
弥に紹介された笛木と美雪は、互いにお辞儀をした。
「美雪さん、お昼食べた?」
「…いえ」
「俺もだ。何か食わないか?」
「え?あー…でも、その話があって来たので」
「なら、ここで食おう。話は食べながらでも出来る」
「…でも忙しいんじゃあ?」
「ああ、忙しいからこそ、食事はしっかり取らないと、だ。笛木君、ビル内のファストフード店で、適当にハンバーガーを買ってきてくれ」
笛木は、「分かりました」応えると、一礼をして社長室を出て行った。
「…え、弥さん、ハンバーガーとか食べるんですか?」
美雪は目を丸くして驚きの表情を浮かべた。
「おいおい、僕を何だと思っているんだ美雪さん。ハンバーガーは誰でも食べるだろ?」
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