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10.a man who smiles at any cost
遅れるなって言われたのに遅れんのが俺なんだよな。仕事じゃあり得ないのに、何でこうプライべ―トだとだらしないんだろ。
ピシャピシャとスニーカーの足元でしずくが跳ねる。何だってこんなジメジメした季節があるんだ。そんな埒も開かないことをブツブツ呟きながら明るい店内に入った。
「すみません、待ち合わせで。」
「はい。」
「予約したのは村上と言うんですけど。」
「ああ、それでしたらもう皆さまお着きですよ。こちらへどうぞ。」
にこやかに案内される先をぼうっとしてついて行った。足元が濡れてひどく気持ち悪い。色の変わってしまったスニーカーを気にしているうちに席についた、らしい。案内してくれた女性の足が止まったから。
「おっせえよ。」
「悪ぃ。」
「夢野先輩、お久しぶりです。」
のろのろと顔を上げれば陽気な声が飛んでくる。見渡して―
嘘だろ。
七年だぞ。
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