1.ジンクス

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玄関を開けた時、理沙(いもうと)の上気した顔が目に飛び込んで来た。 こっちが照れくさくなるほどのふわりとした顔をしていた。いつだって大口を開けてゲラゲラ笑って、日に焼けてラケットを振り回していた小さな理沙が、まるでその辺の女子のように見えた。それからその後ろに、まるで世界の全てから守るかのように大男が突っ立っているのに気が付いた。お前、何の権利があって。一瞬そう思った。 上郡(かみごおり)。 以前から何度かその名前が食卓で行き来していた。バレー部。初めてそう聞いた時、胸が痛んだ。そして目の前の男の、不遜とも思えるような堂々とした視線があの男と同じなのに内心驚いた。まさかこいつ―
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