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頑張っているつもりだった。
千鶴と暮らすため、千鶴を幸せにするため。
でもきっと、それが間違っていた。
俺は、千鶴という柱で支えられており、それが無くなったら何も出来なくなっていたのだ。
千鶴が1番危惧していた状況は、多分、2人で生きると決めた瞬間から、始まっていたのだろう。
「お前の言う自由は、…俺には眩しすぎて難しいよ。」
目の前には大量のアルコール飲料の空き缶とナニカの錠剤。
二度目の約束すら、守れなかった。
そうか、約束を守れなかった者に訪れる離別を、昔何かの御伽噺で読んだ気がする。
仕方ないことだ。
もう今更、自分が生きるためにと仕事に立ち上がる足など持ち合わせていない。
TVを付けたまま、華やかな声が聞こえるままで、身体を後ろに倒してゆっくりと目を閉じた。
千鶴の恩返し fin
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