第三章・ー真打ち登場ー

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「ここにいたのか、コーラルブルー」 「ぶ、部長……」  ヴァイス署員行きつけの喫茶店にて、オフィーリア達がテーブルを囲んでいる前に立ち、陰契課部長であるジョシュア=ブラックホークが声をかけてきた。  短くまとめた黒髪をオールバックにねめつけ、鋭い目付きで睨んでくるだけで相当な迫力を伴うジョシュアに、思わずそう呟いて咄嗟に時計へと視線を走らせる。  ーー幸い、まだ休憩時間内ではあった。  ならば一体何の用事なのかと、わざわざジョシュアの方から出向いてくる事は非常に珍しいため、瞬時に心当たりを探るべく思考を巡らせる。  思い当たる節は、やはり先刻まで話題にしていた修繕費の事だろうと、そう至ったところでジョシュアを見た。  サングラス越しの瞳は鋭く、こちらを睨む様はいまだにジョシュアの機嫌が超絶悪いのだという事実を物語っている。 「……」 「……」  用件があって探していた割に、すぐ口をひらこうとしないのは非常にジョシュアらしいのだが、長く続く重苦しい沈黙に耐え切れなくなったのか、スプラッシュがテーブルの下にやっていた震える手で、オフィーリアが着用する服の裾を握ってきた。 「部長、何や用事ですか」  普段から陰契課での仕事は勿論の事、()()の方でもヤバい連中を相手取って暗殺者やってるだろうにと、オフィーリアは内心で呆れながらも取り敢えず先を促す。 「あぁ。用件か? 出張だコーラルブルー。ついてこい」  それで放たれた言葉は、案の定というよりは、聞きたくもないものであった。 「出張? どこにですか」 「決まっている。イグレシオンだ」  十中八九そうだろうなとは思っていたのだが、改めて言われると、物凄く行きたくない感情が先走る。  是非とも絶対行きたくない。  何せどう甘く見たところで、ジョシュアの機嫌は相変わらず超絶悪いのだ。
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