思惑

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 ラフォーレは昭和の面影を残している数少ない喫茶店である。  聖夜は3年前に、ふらりとラフォーレを訪れた。  ラフォーレの扉を開けて中に入った。  店内は閑散としていた。  聖夜は場違いな店に来たと思ってすぐ出ようとした。  突然、奥から毛むくじゃらの巨体の初老の男がニューと現れた。  聖夜はビックリして後ずさる。  「驚かせて済まない。 悪いけど店を30分位、空けるから見て貰えないか? 飲み物はドリンクバーになっていて、料金は500円だ。 レジの鍵は渡しておくから宜しく」  「ち、ちょっと待ってよ。 見ず知らずの男にレジの鍵を渡して、俺が持ち逃げしたらどうするんですか?」  「わしもだてに年を重ねて来た訳じゃ無い。 人を見る目はあるつもりじゃ。 そう言うつもりだから宜しくな」  そう言うと店主は、脱兎の如く駆け出した。
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