思惑

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 「あっ、瑠璃ちゃん。 待っててくれたんだ。 さあ一緒に入ろうね」  聖夜がラフォーレの扉を開ける。  店内からショパンのピアノ協奏曲が流れて来た。  ラフォーレでは店主のこだわりがあって、昔ながらのレコードを使用している。  年齢不詳だが60歳は超えているだろう。  名前は猪熊源蔵。  名は体を顕すと言うが、毛むくじゃらの熊に似ている。  これほどクラッシックが似合わない男はいないだろう。  おまけに寡黙(かもく)である。
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