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ルージュに願いを
何か有っただろうか?
そうだ!! ポーチから口紅を取り出し彼女にそれを渡した。今回の演し物で女装をする男子のために用意された化粧道具の一つだ。
彼女はそれを手に取ると、不思議な表情をしながら色々な角度に変えては物珍しそうに眺めた。
きっとこの世界には未だこんな形の口紅は存在などし無いのだろう……
何なのか分からず、キョトンとしていたので、部屋に有る小さな椅子に座るように説明する。
何だろう? と思いながらも、素直に彼女は座ってくれた。
先程の口紅を渡してもらい、蓋を開けると彼女はそれを見て驚いた!!
まさか、外せるとは思って居なかったのだろう?
そして今度はクルクルと回すと、赤くキラキラした先端の部分が現れる。
それを見て、彼女は更に先程よりも瞳を大きく見開き、目を輝かせた!!
それを渡すと、彼女はキャンディと勘違いしたのか、舌を出すと舐めようとしたので、慌てて奪うと、小さな子供がぬいぐるみを取られた様な顔をした。
僕は溜息をつき・・・・・・今度は瞳を閉じるように指示をした。
瞳を閉じてもなお、彼女は美しかった。
そんな彼女が怯える程に、社交界の場での恋の成就と言うものは過酷なものなのだろうか?
ドクンッドクンッドクンッ
また心臓が跳ね上がる、しかもさっきよりも強めだ。まるで肋に心臓がぶつかるような痛みさえ有る。
落ち着けと言い聞かせるが、綺麗な彼女の唇に釘付けになっている自分が居る。
一度目を閉じて、ただ彼女に口紅を塗るイメージを描く。そして優しく紅を落とし込んだ・・・・・・
自分の唇とは違い、物凄く柔らかな唇に思わず口づけをしたくなる自分がいた。慌てて目を伏せ、その衝動を抑え込む。
・・・・・・彼女に瞳を開けるように言う。
そして側にある手鏡を彼女の細くて簡単に折れてしまいそうな薄桃色の手へと渡した。
彼女は満面の笑顔を浮かべると、いきなり僕にキスをした。
しかも直接僕の唇に・・・・・・
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