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ロストメモリー
「いえ、いえその・・・私の方ではなく、横にいる男性は? ここまでは、でかかって居るのですが、どうしても……想い出せなくて」
ここでワザと少し眉根を寄せ、少し恥ずかしいが、人差し指がちょうど胸元の真ん中辺りに引っ掛け、そして下へ引っ張りながら、ドレスの胸の谷間が見えるか? 見えないかのギリギリで留め、ここの辺りが苦しいのと強調するかの様に彼を見詰めると。
「あっ、はっ、ユー、胸、胸、優雅なお胸が、いえ、はっ、何とも、フーフー」
「ンッンッンーー、ビスケン! 胸がどうしたと言うの? それに何です! 鼻息が荒くてよ」
「ウオッホン、オッホン、オホンッ、いえ、ローゼンマリア様、これは私としたことが失礼」
「謝るならワタクシにでは無く、ユートピュア様にお謝りなさい!!」
あらら、ちょっとやり過ぎてしまったかも……
この国の人は案外女性慣れをしていないのだろうか?
自分も此処までする必要は無かったのではと少し反省。
若干ローゼンマリアさんの顔が恐い。
まあ、僕に向かってでは無いが、自分の中身は男だから、同じ男として女性に睨まれるのは厳しいものが有る。
此処は何とか元に戻さないと……
「いえ、ローゼンマリア様、大丈夫です、私の所作がビスケンマルクさんを少し混乱させてしまいましたから、彼には非は有りませんわ」
( 敬語と女性言葉ムズっ!)
「ユートピュア様がそうおっしゃいますなら、私は構いませんが」
「それで、ユートピュア様、想い出せないとは……もしや」
「「「記憶喪失!?」」」
「ええ、そうなるのでしょうか、彼のことを、いえ、それより自分の名前と少しばかりのことしか記憶に無くって」
チラッ!?
「「「「「なっ、なんと!?」」」」」
ヨシッ!?
これで、自分が記憶喪失と言うアリバイが成立した。つまりホワイト・スノー皇国の姫が何かの原因で記憶を無くしたと皆に認識して貰えた。なので、分からない事柄や歴史、人物の繋がりなど、好きなだけ質問が出来る。
「それで、この絵の男性の方は…… 私と、どのような関係に有ったのでしょう?」
「何と嘆かわしい、このお方は貴女様の弟で、ユニバーシア・ホワイト・スノー様で御座います。生前は軍神の異名をお持ちで有ったとか」
弟……?
僕に・・・・・・いや彼女に?
(生前って事は、
弟さんももうこの世に居ないってこと?)
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