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思い出し笑いは危険です
召喚前の世界に有ったゲーム”ドキドキプリンセス恋せよ世界の王子様”に
アイゼンハルト様そっくりのキャラがいた事を思い出し、思わず涙腺崩壊からの爆笑に変わっていた。もちろん必死に堪えたので、声は出ていない。
肩の震えがまるで彼等には悲しみの震えと勘違いしたのか?
皆には誤った感情が伝染していった。
そう、”悲哀”という間違った伝染。
「オオ、ユートピュア様、さぞお悲しいのでありましょう」
「………………」
「分かります、分かりますぞそのお気持ち」
「………………」
「うっう"っうっ、ユーち"ゃ~~ん~~バカるわ、ぞのぎもちぃ~~」
「………………」
「「「ローゼンマリア様」」」
「姉様……(汗)」
どうしよう……絶対に今は顔をあげるべきじゃない。
何か悲しい事を思い出して、瞳をウルウルした状態で顔を出さなければ、いまのとてもニマニマした緩み切った顔なんかを見せたら、特にローゼンマリアさんには失礼だ!!
でも、こういう時に限ってそんなに都合良く泣けるエピソードなんて思いつくも無く、最終手段で内腿を思いっきり抓る事にした。
……ッ……痛みで目が潤んだので顔を上げるや否や、フワッと柔らかい布で包まれたかと思うと、仄かな薔薇の香りが鼻に拡がり、気付いた時には、白くきめ細やかな肌の奥に顔が収められていた。
ほんのり温かくとても柔らかい。
(えっ、柔らかい? これって……ひょっとして!)
慌てて顔を上げると、思った通りの場所に先程まで自分の顔がうずめられていると分かると、急に水銀の入った温度計の針が上がるかのように首から順に顔が熱くなるのを感じた。
まさか、まさかこの年齢で女の子の胸の谷間に顔を……しかも相手は公爵家の御令嬢。幾ら自分の姿が女の子だとしても、心は男のままだ。心の準備が出来ていないのに、こんな体験をするなんて。
恥ずかしくって、ローゼンマリア様の顔を見る事などできるはずがない!
「どうなされました! ユートピュア様、お顔が赤くなっておられるが」
「いえ、かっ、体が少しばかり火照ってしまい……まして……?」
しまった、少し誤解を招く言葉を選択してしまった。こういう場合は熱っぽいが正しいのに、動揺していたせいで、言葉選びを誤った。
「「「「「ほっ、火照ってしまわれたのですか!?」」」」」
やっぱり、そうなるよね~~
多分、僕でも同じクラスの女の子がそんなセリフを言われた日には誤解すると思う。まあこっちが緊張して僕の場合は何も言えないけども。
「コレ、ソコ! ソコモッ! 変態丸出しはおやめなさい!!」
「「「申訳御座居ません」」」
「ウホンッ、まったくお前らと言う奴は」
「お父様もです! ガッツリあの方の胸元見てたでしょう(怒)」
「わっ、ワシは……すいません見てました」
あらら、公爵家の主人としての威厳は何処へやら、案外何処の世界もお父さんは娘に弱いのかもしれない。
「全くもう~~、そうだ! 今から私の部屋に来ない?」
「へッ!? あのぉ~~」
(これはヤバイ展開なんじゃ)
「いいでしょ、いいでしょ、女同士ならもっと気楽に話せると思うの、それともイヤ……かしら?」
「いえ、嫌では無いです、でっ『なら決まりね!』も……はい」
「よし、決まり! じゃあ、行きますわよ」
楽しみって、ウィンクされたら世の殿方(自分も含め)はイチコロでしょう。
実はこのローゼンマリア様言動と違って物凄く優しかったりするし、特にそのはち切れんばかりの胸は犯罪です。
元の世界でも起きなかった男の感情が開花しそうなのに、なのに今の身体は全く別人、しかも女の子ときてる。
しかしなんて愛らしい顔立ちをしてるんだろう。コスプレの女の子と違って、ナチュラルな明るめのパープルヘアはグッと来るものが有る。コスプレが駄目って訳じゃなく、自然に伸びた髪の色がまるでアメジストの原石の様にキラキラしているのを想像すると分かると思う。
そう僕はちょうど子どもの頃に母親に連れられて、あのパワーストーンを取り扱うお店に行ったときだ、ドカっと置かれていたクラスターの原石を想い出していた。
ほんのりピンクががった白くて小さな手、それとは裏腹に力強く、流されるままに僕は扉の前まで引っ張られるていく。
一旦彼女の手を振り解くと、慌ててクルリと彼等に振り向いて、カーテシーを行った後、今度は自分から彼女の手を握り、扉を後にしたのだった。
カーテシーを行う直前、勢いよくクルリと翻った際、ユートピュアの宝石のように美しい太ももと純白のそれがチラリズムした、ドアが閉まった向こう側の彼らが皆ある部分を抑えながら、屈みこんだことについて彼女は知る由もなかった……
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