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出口の無い空間
僕は見えない暗がりの中をゆっくりと、部屋の四隅へ向かって歩くことにした。そう目的をこの場所がどこなのか? ハッキリさせることから、扉を探し此処から出ることへとチェンジした。
ぼぉーーっと目に映る各本棚のようなものを頼りに歩いていくと、とうとうそれ以上空間のある場所が無くなった。
それは壁際に到達したことを意味していた。
今度は四隅の何処に扉が有るのか不明なので、壁に手をついたまま、カニ歩きの要領で右手方向に横へ横へと進む。
まず最初の第一面には扉と思しきものは見当たら無かった。そして二つ目の面には、壁では無く、本の様な肌触りと凹みが有り、引き抜いて見ると同じ様に抜き取ることが出来た。
恐らくだが、壁の中に棚の様な空間が有り、その中に物体を入れることのできる構造だと思われる。しかしこの面にも結局変わったところは見当たらず、扉を見つけることが出来なかった。
三つ目の面も同じため、残りの最後の四つ目の面に希望を抱いたが、なんと最後の面にさえ扉と言う扉は存在しなかった。
(暗くて見えないから、見落としがあるのかも?)
仕方なく最初からやり直すため、また最初の一面に戻るため右へ右へと進む。しかし此処でまたおかしな現象に直面した。何と一つ目の面には何も無い壁が有るはずなのに、その他の面と同じ様に本の様な凹凸が面に存在しているのだ。
(どういうこと!? さっきは何も無かったのに……)
見落としていたと過程して、先程よりも慎重に面を手触りだけを手掛かりに確かめる。一面には壁の中に本棚の様な凹凸が有り、二つ目の面にも同じく在った。しかし今度は三つ目の面は壁だけで、凹凸では無くなっていた。
そう今度は凹凸があるはずの面が壁に取って変わったのだ。
本の様な物を引き抜くことは出来ても、決して開くことが出来ず、そしてそれは勝手に元の場所に戻り、壁だった面は自分が移動している間に面と面が入れ替わる。そしてこの部屋には扉と言う物が存在せず、此処からは出ることも出来ない。
密室に閉じ込められた可能性が有る……
此処にはカーテンの様に引くことの出来る布さえ無い。
つまり僕は此処から不思議な力を使って、脱出が出来ないと言うことを表している。
もしも脱出する経路が見つからないとマズイぞっ。
明日には誰かが此処に入って来るかもしれない。いや、夜間の見回りの人もいるかもしれない。
内側から扉が見つからないとしても、外側からは簡単に入ることが出来る構造なのだろうか?
少し焦りはあったが、呼吸を整え気を引き締める。
(そう、こういう時は急がば回れだ)
まずは体力を確保しないと、さすがに疲れたので一旦腰を下ろした。
……ッツ
本棚側を背に靠れ掛かった時だ、ちょうど首の高さ辺りに出っ張っている物が有り、少し後頭部をそこに打ち付けてしまった。怪我になるような大事には至らなかったが、邪魔なので引っ張ることにした。
(抜けない!?)
すぐ横にずれれば良かったものの、僕はなんとなく抵抗したくなったので両手に力を込めて思いっきり引っ張った。
一ミリも動かない。
「それならば、引いて駄目なら、押っしって、みっなっーーーー」
もうその場で休みたい一心でただヤケクソに、反対のことをした。
そしたら……
部屋の何処かで何かが動く音が聞こえ始めたんだ……
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