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隠し部屋と緑色のパニエ
ゴゴゴゴゴゴ……プシューーーーーーー
ちょうどこの場所とは反対側で不可思議な音が鳴り響いていた。
僕はその動きが完全に止まる前に、その場所に辿り着くため急いで立ち上がると、少し早歩きでその場を目指した。
カッカッカッカッカッカッカッカ…………カッタン、カッタン、カッタン、カッタン
プシューーーーーーーーーー
驚いた!?
光が漏れ出る部屋が本棚の奥から姿を顕したのだ。
そしてその光は、この部屋のほぼ全体を照らし、と同時にやはり此処が本棚が置かれている場所で間違いが無いことが分かった。
そして先程の部屋の四面が動いているカラクリも判明した。
何てことは無かった。全ては自分のただの思い込みから、複雑な解釈を行っていたのだ。
この部屋は元々が四角形の構造ではなく、六角形で出来ていたという。
普通部屋と言えば四面の四角形の構造だという観念が、この部屋も四つの壁と言うか面で囲われていると思い込んでいた、だだそれだけだった。
この世界が異世界で、魔法も有ることから勝手に建造物も動くものだと思っていた。ひょっとしてそういう所も有るかも知れないが、今回は違うようだ。
改めて、先ほど取っても、元の場所に戻る不思議な本を、光で照らし出された本棚の本をマジマジと見て手で取りだそうとすると、後ろから声がした。
「アラ、珍しい。こんな時間にお客様ですか?」
振り向くと、光で眩しく顔がハッキリとは見えないが、先ほど姿を表した部屋の主の声で間違いなかった。目を凝らすと視界には、椅子に座る緑色のパニエの長いスカートに、靴はシンプルなデザインに色は赤一色が映る。
しかし腰から上にかけては眩しくて、顔は見えないままだ。黙ったままでいるのは失礼であり、また怪しい者だと言っているのと同じなので、すぐさま声の主へ返事をした。
「すいません、勝手にお邪魔してしまいまして」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それにしてももう夜の八時は回ってるので、図書館は閉館していたはずですが?」
声の主は今の自分よりも年下だろうか? 歯切れの良い小鳩がホーホロと鳴くより少し高めの声だ。ローゼンマリアさんの様な艶っぽい声とはまるで違うが、落ち着きの有る風は有る。
「すいません、帰ろうと思ったのですが……」
「ああ、帰る前に扉が閉まってしまいましたか?」
「ええ……ええそうなんです。そんな感じです」
「アラ、でもどうしてこの部屋に入れたのかしら?」
!?
ビックリした……
さっきまで椅子に座っていた彼女がもう隣に居た。
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