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何やってんだか?
瞬間移動の類いだろうか……?
自分の髪が微かに風で靡いている。
彼女は首を少し傾げた仕草で、人差し指を下唇にあて、訝しげな目で横から覗き込んできた。沈黙していると余計に怪しいので、少し動揺しつつも応える事にした。
「すい…ません、ウロ……ウロしていたら、扉が開いていたので、間違えて入ってしまいました……」
「間違えて入った……禁書庫に?」
少し唇をすぼめて、兎の様な瞳までとは行かないが、クリッとした赤い目をパチクリさせる。敵意の有るような感じは無いが、不思議そうに僕を見つめる。
「…………あっ、えっと」(ちっ、近い)
「ウンウンなるほどぉ~~大丈夫ですよ。貴女からは悪意を感じません。きっと貴女自身も分からない力で此処に導かれたんでしょうから」
!?
「えっ! どうしてそれを?」
「呪い? では無いと思いますが……何かのスペルが貴女の周りを覆っているのは間違い無いかと?」
「呪い? スペル?」
両手を胸の辺りで軽くパチッと鳴る感じで合わせると、『う~ん、古の魔法の様なので、詳しくはアタクシにも分かりません』と呟き、その後首を横へ倒し唇を右側へ歪めた。
何か思い当たる節が有るのか? 考えている様にも見えた。
そして何かを思いついたのか、先ほどの光源の有る部屋へ戻ると、椅子に乗り、本を探し始めた。
面倒くさがりなのか、届きそうに無いのに手を伸ばし、目的の本を取ろうとしていた。
ドスンッ!
(まあ、そうなるよね……)
予想通りの事が起きた。
その光景を見て思わず額に手を当てた。
目も当てられない光景が僕の眼前には映し出されていた。
まるで強風で傘が逆さに開いた時の様に、緑のパニエは反対に捲れ上がり、白のレースの裏地が花開き、露わになった細長い白の塔の頂辺には赤いW(ダブル)型のモニュメントが配われた一種の現代アートが目の前に現れた。
此処では、デルタ部分はデリケートゾーンなので、敢えて触れない事にする。
そう見なかった事で。
幸い光が二本の塔の間に漏れ出て居たので、眩しくて、ハッキリ見えていない……と思う。
いや、思いたい……
僕はただただ、開いた口が塞がらなかった。
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