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思い出す過去
というのも、小学校から中学校まで全寮制の男子校だった。
親と言うよりも父方の祖父が僕をエリートに育てようと躍起になっていた。自分の息子が駄目だったから、孫を優秀にしようとしたのだ。
でも、正直頭の善し悪し何て環境が大きいと自分は思う。
実際自分が通った学校の教育は特殊だった。親の仕事の関係で転勤を機に高校は転入となり、住む場所の関係で共学の学校となったのだが、中学で受けていた授業内容よりも遥かに遅れていて、その時にそのことに気が付いたのだ。
高校では一つの正解しか無い解答を導く学習。
中学までは解答よりもその過程、例えば数学の場合は、この数値を導き出すにはどの様な数式が使えるのか? 英語の授業では文法教育では無く、会話を中心に行い、この会話にはこの文法が使われてると初めて説明される方式だった。言葉を読んで身につくものではない。聴いて身につくものである。
転校と言うことで少し勉強に対し不安に思ったが、授業はむしろ簡単過ぎて拍子抜けしたのを覚えている。
それよりも一番の問題は、幼稚園以来接していない、女の子と言う存在がいきなり目の前に現れたことだった!!
しかも大分成長した姿でだ……全体的に丸みを帯びていることにビックリしたのを覚えている。
だって、自分の女の子のイメージは幼稚園のままで止まっているのだ。もちろん何処かに出かける時や、テレビか何かで小学生の女の子、中学生の女の子の姿は見たことが有る。
でもでもだ、高校になってイキナリ目の前に現れるのは、二次元とか脳に収納された情報と異なりプレッシャーがそりゃもう半端なかった……
彼女達に矢継ぎ早に質問されても、何をどう話せば良いか分からない。
「ねえ、雪白くんは彼女とかいるの?」
「夕くん夕くん」
「ゆ……下の名前で呼んでもいいですか!?」
……どう返事をすればいいのかさえ分からなかった。
授業で出される問題で有れば解答を導き出すことは出来る。答えが決まっているからだ。でも、異性と言う異なる生命体からは聴いたことも無い高くて、ドキッとしてしまうような声、それだけを耳にするだけで自分は萎縮してしまい何も話せなかった。
そのことで男子としか話さない男の娘というレッテルが張られていった。
僕に対して彼女達の中で誤解のイメージが出来上がったのは、それほど時間が掛からなかったのだ。
そして彼女達からのお誘いはいつの間にか、無くなくなって居た……。
高校二年生になってもそれは変わらなかった。ジャンケンで負けて、取り敢えずクラスメートの女の子に借りたこの制服。
借りるときも…『本当はこっちが着たかったんでしょ、良かったじゃん願いが叶って(笑)』
”そうじゃないんだ棚橋さん” !!
その言葉も言えないまま借りたこの制服で、僕はいまこのステージに立っている。
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