鏡の美少女

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鏡の美少女

 オークション会場から逃げるため、彼女の指示に従い馬車の有る外へ向かおうとした。    目の間には少し埃で汚れた、黄褐色の大きな布が見える。    僕は勢いよくその布をくぐり抜けた!!    しかし舞台袖のカーテンを潜った先には、舞台裏など無かった。    それどころか、布捲ったあとには、身体が光に包まれていた。  そして、気付いた時には、僕の目の前には一人の金色(こんじき)の髪の女の子が立っていた。  その女の子は、物凄く大きく瞳を開き、口をあんぐりと開けたまま、僕の方を見ていた。何か恐ろしいものでも見ているかの様な眼だ。それはすぐにでも顎が床に落ちそうな勢いだった。  後ろに何かいる…僕は恐ろしくなり、まだ見ぬ後ろの影に瞳孔が開く。  釣られて自分もその方向を振り返ると、そこにはとても大きな映し鏡が有った。目の前には二人の少女が驚いた表情で立って居た。  もう一度、彼女の方向へ向き直したが、思わず鏡を二度見した!!  そこには自分が映って居なかったからだ。鏡には女の子が二人しか居ない。 一人はまるでシルクを金に染めた様な髪で、ほんのり青みががったレースのドレスを着た女の子、そしてもう一人は僕が通っている学校と同じ制服を着た可愛らしい女の子がそこには居た。       ……僕と同じ制服を着た? 可愛らしい女の子?  はっ?  どう言う事だ、鏡に映っているのはどちらも女の子で、僕はと言うと映っておらず、代わりに自分と同じ高校の他のクラスの女子生徒が映り込んでいた。  どうやら、僕と同じでもう一人この世界に迷い込んだらしい……  いや、もしかすると、もっと多くの人がこの世界に転送されたのかも知れない。ひょっとして学校ごと何てことも有り得るかも。    そうだ!! どうせならこの機会に自分の女性に対する苦手意識を克服するチャンスかも知れない。しかも物凄い可愛い子だ。もう一人の金髪の女の子と引けは取らない、寧ろ少しこの子の方が一歩リードしてるほどだ。  でも、どうしたものか?  自分は鏡に映っては居ない。  どうやって声を掛けようか?    まあ、考えて居ても仕方がない、取り敢えず行動あるのみ。この方向だと金髪の女の子しか見えないので、多分自分はちょうど彼女達の間に居るのだろう。    もう一度鏡の方向へ振り返り、見えないだろうけど、こんにちはと手を振って挨拶した。  すると制服の彼女は僕と同じ様に手を振った。
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