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何を話していいのか困ってしまって、私はうつむいて真崎の後についていく。真崎は何度か立ちどまって振り返る。背が低いのが恥ずかしい。
あれ? 私、女の子だったよね? 実感が遠のいていることに、急に不安になっちゃう。
足を止めた私のほうに真崎が戻ってくる。
「ごめん、薫。速すぎたみたいだね。わりい、わりい」
「じゃなくて……」
「え、何?」
「あの、真崎……って」
でも私は言いたかった言葉を飲みこむ。
『もし僕が、女の子だったら、好きでいてくれるの?』
「変だなぁ、薫」
冗談めかしてはいるが、真崎も少し不安になったようだ。だって、それも当然。まだ、私、本当に君が好きだって、言ってないもん。でも、まだ言いづらいんだ。
真崎は裏道の小さな店のほうに、すっと歩いていった。
「ラムネ、二つ」
「あいあい、お兄ちゃん、ラムネ冷えてるよー」
だみ声のおばさんの声がする。模造紙に手書きで「ラムネ」「コーラ」「コーヒー牛乳」「駄菓子」「カップアイス」「コーンアイス」などと書いたものがべたべたと貼ってある店だった。
ラムネ、なんて。
目の前に差し出された透き通った水色、揺れるビー玉を見て涙が出そうになる。ずるいよ、真崎。こんな、切ないような気障なこと、平気な顔してやるんだもん。
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