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真崎と並んで、歩きながらラムネを傾ける。微かな風鈴のような音。裏通りだから、さほど人や車の通りも少なくて、静かだ。
こんなに飲めるかな、と心配だったが、案外ぐいぐい飲んでしまった。
「やっぱ、喉渇いてたよね」
「うん。美味しかった」
「今度さ、うちへおいでよ。両親、父方の爺さんの具合がよくなくて、一晩家を空けるんだ。そのときに、泊まりにきなよ」
まだ口の中にあったラムネが噴き出す。
「あれー」
真崎がハンカチで私の制服を拭いてくれた。ハンカチは、紺のチェック柄で、制服のズボンに入れっぱなしだったせいか、変に曲がってクシャクシャだ。急に、このクシャクシャのハンカチが愛おしくなった。私、変態?
「わるい! このハンカチ預かるよ。洗濯して返す」
私はこわばって笑いながら、半ばむりやりそれを自分のバッグにねじ込んだ。
「え、いいの?」
私がハンカチごときに異様な執着を見せたので、真崎はぽかんとしている。とりかえす気にもならないのかもしれない。
「うん! アイロンかけて返すからね!」
「薫って、変な奴。でもそこがまた、気になっちゃってたまんない」
真崎はいたずらっぽく目を細めた。
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