第3部

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 小山を登るには、細い木の幹で土をせき止め階段にした道を登っていくのがいちばんだ。でも、体力のない私はすぐに息が上がってしまう。先を歩く真崎が振り返ってさりげなく右により、左腕を伸ばした。  私は右腕を伸ばしてその手をつかむ。とたんにぎゅっと握りしめられる。  上の方の雲が黄金色に染まり始めている。  息と一緒に心も弾む。まだ半袖のシャツだから、真崎の腕、太い血管が浮き出ているのがとてもきれい。静脈の薄青い色にはふっと口づけしたくなって、はっと我に返る。  陽に透けて真崎の髪は薄茶色に輝いている。首すじも長くて、くっきりとした線で、大好き。  はあはあはあはあ。  僕はだんだん自分の息とうっとりした気分だけに包まれていく。 「ほら、その岩の横を抜ければ展望台だよ」  真崎の声でまたはっとする。僕はもう、しっとりと汗ばんでいる。  いちばん急な岩の横を通り抜けると、いきなり視界がぱあっと拓けた。  ちょっとした広場のようになっていて、もちろん、こんな時間、誰もいない。右手に沈んでいく夕陽。季節がらまだ白っぽい夕焼けだけど、それでも日中のぎらぎらがいつのまにか優しくなっている。  正面には、街の端っこを流れる大きな川。ゆったりとうねり、遠目でも微かに水面が光っているのが分かる。ずっと奥の山の方から流れてきて、もうすぐ海へと到達する流れ。広い川べり。人の姿が豆粒のようにぽつんぽつんと見える。  見惚れていると、すっと後ろから肩に腕がまわされた。どきりとしたが、すぐに気づいた。真崎、震えてる?
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