第3部

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 疑ってるというのじゃなくて、信じられなかった。本当? 本当に、真崎は僕が好きなの? 好きなんだ、よね?  しばらく何と言っていいのかわからないかった。風が吹き抜けた。夕陽は確実に赤みを増している。微かに揺らめいているのが目に入ってきた。 「真崎」  かすれるような声で僕は言った。  背後で温かい息が漏れた。 「友だちって言ったけど、やっぱり薫の気持ち、聞かせてくれる? 無理しないでもいいから」  無理なんて! だって僕の気持ちは女の子だったときからずっと……! 「わ、ぼ、僕も……」  真崎が息を殺す気配が分かった。 「僕も、真崎が好き。ずっと、ずっと前から!」  吐き出すように言ってしまった。だって、本当に電車のなかで盗み見していたあのころから。まだ同じクラスでもなかったころから。  同じクラスになって毎日がどきどきの連続で、自分でもどうしていいのか分からなくて。  もちろん、近づくことなんて思いもよらなかった。ただ、遠くから憧れているだけでも当時の私=僕には十分すぎるくらいだったんだ。  真崎の背が高くて筋肉のついた身体、長くてくっきりした首筋。さらさらの少し薄茶の髪。でも、そんなこと以上に、眼。そうあの優しくて悪戯っぽい眼。水泳部の癖に色白で、唇は薄くて。  「私」のときも、「僕」になってからも、まぶしくて仕方ない存在だったんだ、真崎は。 「薫、ほんとに?」  その真崎が今、後ろから僕の肩を抱いて小刻みに震えている。  一筋にたなびいた雲も金色に輝き始めた。
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