26人が本棚に入れています
本棚に追加
倫子ちゃんを裏切ってしまったような後悔と恥ずかしさ。本当は、僕と真崎はもう思いを打ち明けあっている。それなのに、いたずらに倫子ちゃんに期待を持たせてしまうなんて、なんて酷いことを自分はしているんだろう。
あの後、倫子ちゃんはほんの少し目をきらりとさせて、僕の作り笑いに微笑を返して、図書室の庭を去っていった。
よほど、追っていこうと思ったけれど、そうして何を言う?──そう思い当たると僕は動けなかった。
その後しばらく、僕は図書室の庭で風を受けていた。何もいい案は思い浮かばなかった。ただただ、倫子ちゃんに申し訳ない気持ちと、でも僕も真崎が大好きでしようがないっていう気持ちと。
今日は、とても真崎と一緒に帰る気になれなかった。LINEで『ごめんね、今日は先に帰る』とだけ入れて校門を出た。
僕は、真崎も倫子ちゃんも、とっても好きなんだ。
真崎とお互いに気持ちを伝えあえたうれしさが、こんなに胸を締めつける苦しさに変わるなんて。こんなに幸せなのに、その幸せが大好きな友だちを裏切ることになるなんて。
とぼとぼと一人、駅へ通じる通りを歩きながら、周りの光景はもう何も目に入ってこなかった。
最初のコメントを投稿しよう!