26人が本棚に入れています
本棚に追加
「ち、違う」
僕は慌てて真崎の言葉を否定する。確かに、真崎の家にお泊りは緊張するけど、それで悩んでいるんじゃない。確かに怖さはある。まだ、アレに馴染んでないし、真崎がどこまで考えているのか分からないし。でも、今はそんなことよりずっとずっと、胸を締めつけているものがある。
「そうか」
軽く息を吐く真崎。ほっとしたような、でも寂しそうな。そして続ける。
「あの、まださ、つき合いだしたばかりだけど、俺、本当に薫のこと、前から……。だから、悩みがあったらいつでも打ち明けていいから」
僕の心臓がまたどくんとする。『本当に薫のこと、前から』。前からって、いつから? 男が好きなんではなくて、『薫』が好きということでいいの? そんなこと、訊けない。
でも、今目の前にいる真崎を失望させたくなくて、僕は言葉を絞りだす。何気ないふうを装って。
「自分の悩み、じゃないんだ。ええと、他の高校に行った友だちなんだけどさ。本当に好きな人がいて、相手がつき合っている人がいるのか知りたくて、すごく悩んでるんだ。昨日はね、実はその子の話を聞いていて」
真崎は軽く驚いたように僕の眼を見る。
「薫って、本当にいい奴だなぁ。その友だちのことで頭いっぱいなんだね」
僕はこくんと頷く。真崎の表情が晴れた。
「あー、妬けるな、そいつ。でも、薫のそういうところもまた好きになった」
僕が黙り込むと、また真崎が首を傾げた。僕は思い切って言ってみた。
「その子、ええと、女子なんだ。だから、その、妬くことないよ」
言ってから、自分でも混乱してきた。倫子ちゃんはもちろん、他の高校ではない。今、僕たちと同じクラスで、本当は僕の親友で、そして真崎が好き。
最初のコメントを投稿しよう!