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第5部
「ああ」
真崎は何も気にしていないふうに、
「大丈夫、薫って繊細なところあるから、その女の子も、同性より薫のほうが相談しやすかったんだろ。何となく分かるよ」
そして心底安心したというふうにちょっと空を見た。その横顔がきれいで、僕は見惚れてしまう。本当に、こんなに優しくて素敵な真崎が、僕なんかを好きになってくれるなんて。まだ、信じられないところさえあるんだ。ずっと、遠くから見ていた人。
でも、今はそんな気持ちに溺れていてはいけない。ここで訊かなくちゃ、この先当分訊く機会はない。
「真崎」
「うん?」
「真崎って、女の子は好きになったことないの?」
「うーん、何ていったらいいのか。山田や安藤はああいう感じだけど、俺そんなに興味なくて。でも女の子とか、男とかいう前に、薫のことが気になって。実を言うとさ、中学んとき、女の子とつき合ったことはあるんだ。二人。……告白されて、俺も嫌いじゃないから。でも、ぴんと来なかったんだよね。……薫が初めてなんだよ。こんなに気持ちが惹かれてどうしようもないのって。でも、薫が困ると思ってずっとその気持ち、隠してた。あんな機会がなかったら、まだ黙ってたかも。俺、けっこう片思いでもいいんだ」
プールで僕を助けてくれた時。
その前は、「水玉」なんて僕をからかって、気持ちを隠していたのかな。胸が熱くなる。やっぱり『薫』を好いてくれたんだ、でもそうしたら、倫子ちゃんはどうなるのか。
それに、倫子ちゃんに何て答えればいいんだろう。
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