01.

1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

01.

「こりゃ、まいったな……」  望遠鏡をのぞいていたウミガメの天文学者はため息をつく。 「どうしたんですか。ウミガメの天文学者さん」  そばを通りかかったヒトデがウミガメの天文学者にたずねる。 「また夜空からいくつか星がなくなったんだよ」  ウミガメの天文学者は夜空を見上げる。ヒトデもまた夜空に顔を向ける。 「そのうち私たちも星泥棒に盗まれちゃうんじゃないかって、心配してるんですよ」  ヒトデの言葉に、ウミガメの天文学者もうなずく。 「ヒトデさんの心配もよくわかるよ」 「でも、ウミガメの天文学者さんもお困りなんでしょう? 私たちなんかよりもずっと」 「そうだな。われわれ天文学者は星座や星の位置を観測して暦を作るし、星図を作る。  みんな暦は毎日見るし、海を渡る者や空を渡る者は星図を見るだろう?」 「そうですね、このあいだも渡り鳥さんが困ってましたよ。夜が来るたびに星が減っているからって。そのうち、方向をつかめなくなるんじゃないかって心配をしてましたよ」 「そうだろうなあ……。このままじゃみんなが困ってしまう。どうにかしないとな……」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!