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放課後の生徒玄関、下駄箱の陰。
私が想っていた彼が、同じクラスの女子と肩を並べて校舎を出ていく姿を見た。
ほらね。やっぱり、そうなんだ。
想っているだけでよかったのに。
想っているだけなら、こんなにも悲しまないで済んだのに。
全部、一足遅かった。
やっと踏ん切りがついたのに。
諦めきれずに、やっぱり言わなきゃ、伝えなきゃって思えた時には、彼はもう違う子の恋人になっていた。
もう、いいんだ。
私の「最初の恋」は、これでおしまい。
ここからは、イチからやり直し。なんの縛りも憂いもなく。
好きな相手にははっきりと「好き」って伝えればいい。
私のような弱いやつには、自分の気持ちを押し留めることなんて、できはしないんだってわかったから。
ひたすらに心の中で慈しむのも、恋する気持ちを愛でるひとつの方法。
けれど、わずかな希望に縋りたくなるのが、人間というものだ。
恋をしなくたって、人は死なない。
けれど、永遠に叶わない恋は悪性のウイルスになって、人の心を少しずつ殺していく。
そんなの、嫌だね。
まだ死にたくないもの。
私は、ブレザーのポケットに入れてあった恋文を握り潰した。
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