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「でもね。俺はあおいが離れることを許さない。俺はね、あおいが居なきゃ──死ぬから」
怜也は低い声でそう言って、私を床に押し倒した。リビングの光が遮られ、真っ暗な表情の彼が視界いっぱいに収まる。
どうして。どうして。いつも通りに別れるはずじゃないの? みんな私の事なんて必要としてなくてすぐ別れてくれたのに。 私はひどい人間だから、別れてくれるんでしょ。ねぇ……
突如その思考は遮られる。
怜也は無表情で服のボタンを外してきた。
外しながら口に舌を強く入れてきた。絡みなう舌。思わず熱い吐息が漏れる。
そのまま激しく抱かれた。冷たい空気に溶け合う私たち。闇へ、闇へ、どろどろと沈んでゆく。
「あおいが居なきゃ俺は死ぬ」
何度目か分からない言葉を何度目かわからない絶頂の度に告げてくる。
怜也は私がいなきゃ死んでしまう。ぼんやりとした思考の隅でそう思った。
「人殺しになりたきゃなければ離れるなよ」
怜也を殺さないため。
「一緒にいてくれたら十字架は背負わせないから」
十字架から逃れるため。差し伸べられた細い糸。
「愛してるよ……愛してる……アイシテル」
声荒れたラジカセのように愛情を向ける彼。
指先を掴む。
闇へ沈み溶けていく。絡み合って溶け合って。
離れないでいて。
私たちはそっと耳元で囁いて更に溶け合って行った。
〈終〉
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