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「つぐみ
朝よ、起きなさい。」
『・・ねむ・』
つぐみはふかふかの布団から
無理やり体を引き離すと
両親が囲む食卓についた。
清潔なダイニングに
温かい湯気が立ち上る。
炊き立てのツヤツヤなご飯に
お豆腐とわかめの香り豊かなお味噌汁
骨取り鯖の塩麹漬けの焼き魚が
一膳ずつ、きちんと用意されている。
『ご飯か・・食べるのめんどくさいっつの。
パンがよかったわ・・』
黙々と箸を運ぶつぐみの目の前で
両親が美味しいねと
朝から微笑みを交わして
優雅に朝食を楽しんでいる。
早々に食事を終わらせたつぐみは
サニタリールームに続くアーチ壁を抜けると
大きな曇りひとつない鏡に
シミひとつない白く透き通った肌を映した。
そして、お気に入りの甘い香りのヘアミルクを
小鳥の羽毛のような髪にふわっとセットして玄関を出た。
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
いつも通り、おっとりとした母親が
柔らかい笑顔で、軽く肘を曲げて
ひらひらと手を振っている。
その隣で大柄で森のクマさんのような父親が
安定感のある優しい笑顔で見送っている。
「うざ」
と、一言
独り言を吐いて、庭先の小花が揺れるポーチを抜けていった。
明日はつぐみの18歳の誕生日。
両親が何をやらかすかと思ったらため息が出る。
手作りの両手いっぱいの、どでかいホールケーキと
惜しげもない盛大なプレゼント
恥ずかしげもなく歌を歌い
2人して抱きついてくる。
つぐみ!誕生日おめでとう!
18回目ともなると
まだ、明日が来なくとも
何が起きるか想像がつく。
つぐみは大袈裟にため息をつくと
学校の門をくぐった。
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