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ハンバーガーにがっつくトオルの頬についたパンの屑を指で取り、ノエルは微笑む。 「その食べっぷり、変わってないね」 「ん!今、なんか指の感触したぞ!?」 「うん。肌に触れた感触も伝わるよ」 トオルは神妙な面持ちでノエルに問いかける。 「それって、殴られたりしたら痛いって事か?」 「電脳世界では暴力、又はそれに殉じる行為は出来ないようになっているんだよ。人や物を殴ったりすると防壁が発生して、運営管理しているミドガル社に通報が入って電脳警察が駆けつけるようになっているんだ」 「へぇー!」 「その場合、罰金や数日間ダイブ禁止なんかに処されるらしいよ。まぁ、トオル君はそんな粗暴な振舞いしないだろうし関係ないかな」 ノエルから様々な電脳世界の仕組みを聞き、トオルは「なるほど」と大体は理解した。 「次は街に出てみよう」 ノエルに教えられ、サイバーウォッチでEエリアのマップを開いたトオルは興奮気味に声をあげる。 「ノエル!ここって、ギャラクシーベースか?」 「うん。本当はもっと色んな場所に案内したかったけど、それを見つけられたら連れて行くしかなさそうだね」 ギャラクシーベースには、銀河戦域をプレイする為の宇宙戦闘機『ギャラクシーバード』が配備されている。 「そりゃ、そうだろ!だって銀河戦域を二人でプレイするのが目的なんだから!」 ギャラクシーベースに入るとロビーには沢山の人達がいた。 待合席に座り、巨大モニターで試合観戦する人、カウンターでスタッフと話をしている人と様々だ。 「カウンターにいる人達って何してんだ?」 「受付だよ。あの人から出撃許可を貰って試合に参加するんだ」 「なるほどな!さっそく、受付しようぜ!」 ノエルは受付カウンターに行こうとするトオルの手を掴み、制止する。 「焦らないで、トオル君。まずはギャラクシーバードを購入しなくちゃ」 「ギャラクシーバードって自分で買うのか!?」 「流石に、それくらいは知ってるかと思ってたけど・・・もしかして、試合動画しか見てない?」 面目なさそうに笑うトオルを見て、ノエルは少し呆れ顔で手を引いて歩き出す。 「先に格納ルームだよ」 「なるほど!」 「・・・手、大きくなったね」 「ノエルの手が小さいんじゃないか?」 ノエルは手を離し、ドアを指差した。 「あそこから入れるんだ。さぁ、行こう」 「おう!」 ドアが開けば、ギャラクシーバードが並んでるんだろうな! 期待に胸を膨らませ、ワクワクしながらドアが開くのを待つトオルだったが・・・そこには、モニターが備え付けられたテーブル席が並んでいるだけだった。 「えー!?ギャラクシーバードは!?」 「はいはい、まずは席に座ろう。見ててね、トオル君」 ノエルは席に座り、モニターにサイバーウォッチを向けると・・・画面に鳥の姿を模した灰色の戦闘機が映し出された。 「出た!ギャラクシーバード!!」 「ここでギャラクシーバードの購入、カスタマイズをするんだ。それから、データをサイバーウォッチに保存して受付を終えたら出撃っていう流れになるんだよ」 「意外と面倒臭いんだな」 「カスタマイズも楽しいけどね。隣に座って、トオル君」 トオルが席に座ると、画面にギャラクシーバードの全体図が映し出された。 「先ずは、今画面に映ってるギャラクシーバード『スパロウ』を購入するんだ」 「なんか、弱そうな機体だな」 「最初は皆、スパロウからなんだよ。1000Dで購入できるから」 サイバーウォッチをモニターに向けて決済すると、ノエルと同じカスタマイズの画面になった。 「カスタマイズって、何するんだ?」 「電脳通貨で武器を購入して装備させたり、スペックアップしたり、色や見た目を変化させるって感じかな」 「それって、全部金がかかるのか!?」 「お金の心配は、そんなにいらないよ。出撃して戦果を上げれば報酬金が手に入るから」 ノエルの話を聞き、トオルはホッと息を吐く。 「小遣い、全フリしなくちゃダメかと思って焦ったぜ。漫画本が買えなくなるのは嫌だからな」 「今も紙の漫画読んでるんだ?」 「やっぱ、電子版より紙の方が読んでるって感じするからな!」 「僕は本屋さんに行く手間が省けるから、電子版派かな。話が逸れたけど、カスタマイズを進めよう」
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