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1ー8
いつものようにトオルとノエルはロビーでアルが来るのを待つ。
「今日はアルちゃん、遅いな」
「少し遅れるとアルさんからメッセージ来てたよ?」
「マジか!そんなメッセージ来てたかな?」
トオルがサイバーウォッチをチェックしようとした矢先、アルが姿を現す。
「お待たせしました。実は紹介したい方がいて・・・戸岸君、皆に挨拶を」
アルの隣に立っている男は、かったるそうに顔を向ける。
「ご紹介にあずかりました、戸岸 邦雄で~す。16歳で~す。よろしく~」
簡単な自己紹介をしながら、トキシはブイサインをする。
身長は170cm 体型 細身で手足が長い
髪は緑 アシンメトリーツーブロック
瞳は黄色 つり上がった一重まぶた
服装 赤いパーカーにジーンズ、靴はスニーカー
見るからにガラの悪いトキシの登場に二人はドン引きしていた。
トオルは、見た目で判断するのも良くないよな!と思い、いつも通り元気良く自己紹介を返す。
あからさまに嫌そうな顔をしていたノエルもトオルを見習って自己紹介をした。
「トオルちゃんにノエルちゃんね。銀河上手いんだって?俺も仲間に入れてくれよ」
「トキシ君、二人が引いてるわ。ごめんなさい、彼に二人の事を話したら、どうしても会いたいって」
「か、彼!?」
「アルさんの、彼氏さん・・・ですか?」
驚くトオルとノエルを前に、アルはもげるんじゃないかと思うくらいの勢いで首を横に振る。
「全然違います!」
「アルとは、ただの幼馴染みだ。つうか、こっちから願い下げだっつーの」
「なんですって!?」
いつもおしとやかなアルが見せる、意外な一面を見てトオルは思わず吹き出した。
「あはは!アルちゃんでも、そんな怒ったりするんだな!」
「トオルちゃん、俺の前だといつもこんな感じだぜ?」
「では、これが本当のアルさんという解釈で良いのかな?」
「ちょっ!?ノエル君まで、私をいじるんですか!?もう!連れてこなければ良かった!」
プンプン怒るアルにノエルは笑いながら謝った。
「すいません、ついノリで」
「もう良いです!本題に入りますね。トキシ君はこう見えても銀河戦域の腕だけは確かで、ランクポイント2000以上のハイレベルプレイヤーです」
「2000!?今、俺達って・・・いくつだっけ?」
「ざっと100前後だよ、トオル君。つまり、僕らの10倍以上の戦果をあげてる・・・大袈裟に言えば、プロに近い実力のプレイヤーって感じかな」
不敵な笑みを浮かべ、トキシは言った。
「ちなみに、ずっとやってねぇから今は150ちょいだがな!」
「表情と台詞が合ってないじゃん」
「お、トオルちゃん、ナイス突っ込み!」
「落ちぶれたわね、トキシ君」
「あれ以来、格ゲーばっかやってたからなぁ~ 基本操作も危ういだろうぜ!」
「いや、自信満々で言う台詞では無いかと」
「お、ノエルちゃんも、ナイス突っ込み!てな訳で、お兄さんのリハビリに付き合ってくれねぇかなぁ~?お礼に小遣いあげるから、ね?」
「こ、小遣い!?」
「そこに反応するのはダサいよ、トオル君」
「いや、ちょっと乗っかっただけだよ!話してみたら、気の良い兄ちゃんだしアルちゃんの紹介なら全然OKだよ!な、ノエル?」
「トオル君が良いなら、僕は一向に構いませんよ」
トオルとノエルの言葉を聞き、アルはホッと胸を撫で下ろす。
「二人が寛大で良かったわね、トキシ君」
「それな!お兄さん、感謝感激だわ」
そんなこんなで、四人はチームを組みプレイを開始する。
「トキシの兄ちゃん、なんか機体フラフラしてないか?」
「と、トオルちゃん・・・待って・・・吐きそう」
「えー!?まさか、ゲームで乗り物酔いかよ!?」
「情けないわよ、トキシ君」
「と、とりあえず、ゆっくり戦域に向かおうか?」
「すまん、ノエルちゃん・・・すぐに慣れると思うから、先に行ってくれ」
三人はトキシを残して、先に戦闘空域へと向かって行った。
トキシは軽く溜め息を吐き、チャットをオフにして小言を漏らす。
「なんで俺がこんな猿芝居に付き合わなきゃなんねーんだよ・・・これで大した事なかったらタダじゃおかねぇからな、アル!」
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