悪夢

1/1
前へ
/32ページ
次へ

悪夢

太陽の光も遮りそうな林の中、白く濃い霧が湖を覆い隠していた。 夜明け頃、小さな少女が水しぶきを立てながら水の中を歩いていた。 どんどんと深みへ進んで行く少女に…… 「行っちゃだめーーッ!!」 岸辺からもう一人、同じ顔をした少女が必死に呼び止めていた。 水の中の少女は岸辺にいる少女へ向かって叫ぶ。 「ママが呼んでるの!」 そう言うと再び湖の中心を目指し歩みを始める。 「行っちゃだめよッ!!」 岸辺からの呼び止めに、水の中の少女がそちらへ振り返った。 「ママが呼んでるのよ?」 「ッ!?」 岸辺の少女は水の中の少女を見て息を呑んだ。 少女の背後、水中から黒く巨大な手が伸びていたからだ。 岸辺の少女が声を上げる間も無く、黒い手は少女を掴み水中へ消えていった。 「!!」 「どうしてッ……なんでぇッ!!」 暫くして女性の泣き叫ぶ声が響いていた。 女性の腕の中、全身ぐっしょりと濡れた血の気の無い少女が抱かれていた。 水中に消えて行った少女だ。 既に息はない………… その光景をもう一人の少女は呆然と見詰めている。 必死に制止の声を上げていた少女だ。 そんな少女に向かい女性は…… 「お前のッ…………お前のせいだッ!!」 「!?」 「お前が悪魔だからだあッ!!」 「ッ!?」 アイラは自分のベッドで眠りから覚めた。 それは何度も見る悪夢…… アイラの頬に涙が一筋流れた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加