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悪夢
太陽の光も遮りそうな林の中、白く濃い霧が湖を覆い隠していた。
夜明け頃、小さな少女が水しぶきを立てながら水の中を歩いていた。
どんどんと深みへ進んで行く少女に……
「行っちゃだめーーッ!!」
岸辺からもう一人、同じ顔をした少女が必死に呼び止めていた。
水の中の少女は岸辺にいる少女へ向かって叫ぶ。
「ママが呼んでるの!」
そう言うと再び湖の中心を目指し歩みを始める。
「行っちゃだめよッ!!」
岸辺からの呼び止めに、水の中の少女がそちらへ振り返った。
「ママが呼んでるのよ?」
「ッ!?」
岸辺の少女は水の中の少女を見て息を呑んだ。
少女の背後、水中から黒く巨大な手が伸びていたからだ。
岸辺の少女が声を上げる間も無く、黒い手は少女を掴み水中へ消えていった。
「!!」
「どうしてッ……なんでぇッ!!」
暫くして女性の泣き叫ぶ声が響いていた。
女性の腕の中、全身ぐっしょりと濡れた血の気の無い少女が抱かれていた。
水中に消えて行った少女だ。
既に息はない…………
その光景をもう一人の少女は呆然と見詰めている。
必死に制止の声を上げていた少女だ。
そんな少女に向かい女性は……
「お前のッ…………お前のせいだッ!!」
「!?」
「お前が悪魔だからだあッ!!」
「ッ!?」
アイラは自分のベッドで眠りから覚めた。
それは何度も見る悪夢……
アイラの頬に涙が一筋流れた。
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