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「違う、と思う」
「何だそりゃ。あれか、学校嫌いか。俺も学校が嫌で殆ど行かなかったけど、こんなに立派な泥棒に……嘘だよ」
「そんな特技があるなら普通にモテたでしょ」
「根が暗いからかな。気持ち悪がられた」
「イヤなやつばっかりだね」
理由は少し違ったが、私も学校が好きではなかった。
「私はたぶん行けるけど、行きたくない」
クラスメイトの表情や話す声にいちいち反応しないようにすれば、行けないこともなかった。でも、それだといつまでたっても友達と呼べる仲にはなれない。
「無理に行くことはないけど、カーテンを閉め切ってたら見えるものも見えないぜ」
泥棒はカーテンを勢いよく開けた。真っ赤な夕焼け空を背にして飛行機が飛んで行く。
「あっ。そろそろお母さん帰ってくるかも」
「それはまずいな」
そう言いながらもしばらく二人は空を見つめていた。彼の顔は穏やかで、とても犯罪を犯して来た人間に見えなかった。
「毎日、少しでもいいから外の空気吸えよ」
「泥棒のくせに最後まで偉そうだね」
「泥棒は二十歳になった今日で終わりだ」
「え?」
「自首する。お前と話していたらそんなふうに思えたんだ」
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