出:コーヒー

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出:コーヒー

 あっという間に残りの半月も過ぎて、ついに退職の日がやってきた。宮野さんはその後もオフィスにはやって来なかったが、それは単純に年度末で本社の仕事が忙しかったのだろう。  東京に残ることにしたと言ったら、後輩は飛び上がって喜んだ後「え、なら余計に辞めないでくださいよ〜!」と、やっぱり悲しむことにしたようだ。    安藤さんに個別でお煎餅を渡すと「ほら、そうやって気を遣い過ぎるところ!」と怒られたが「気を遣ったんじゃないです、単純に安藤さんに貰って欲しかったから」と反論すると「なら、まあ良いけど……」と、何故だかちょっと得意げな顔をしていた。  私がいてもいなくても良いこの環境…… だけれどそれは、私がいなかったという事にはならないんだ。私は、確かにここで生きていた。    別れは寂しかったけれど、旅立ちの不安はなかった。
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