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:何で死ななきゃいけないんだろう
目を覚まし、辺りを見渡す。体に力が入らず、首を動かすことも出来ない。どうやら横に寝させられているようだ。辛うじて、近くに人の気配を感じ取った。視線をそちらへ向ける。そこには椅子に腰掛けたまま、やつれた顔で眠りにつく宮野さんの姿があった。
あれ、てっきり血塗れの拷問器具とかが勢揃いの部屋にでもいるのかと思ったのに…… もう一度辺りを見渡す。そこはどうやら、病室であった。少しではあるが体に力が戻ってきて、頭を起こすことができた。腕には管が通され、点滴を打たれている。一体どうなっているんだ? 私が動いた音で、彼が目を覚ました。
「か、加賀さん……? 目を覚ましたんだね! ここ、病院だよ。覚えてる? 俺の家で突然倒れて、運ばれてきたんだ。ま、待ってて、今先生とご両親呼んでくるから!」
慌ただしく病室に入ってくる母。目にはたっぷりの涙をたたえている。その後ろに父と宮野さんの姿があった。皆悲しみにくれた顔をしている。ここら辺で、嫌な予感がし始めた。拍子抜けも良いところだった。私は殴られて気絶したわけではなかった。
お医者様に告げられた
私は、がんだった
もう手術などでどうこうできる段階ではないそうだ。この眠りから覚めない可能性も十分にあったという。
何を言っているんだろう? 頭の中がはてなマークでいっぱいだった。だって私はまだ二十代半ばで、人生の再スタートをいざ切ろうという時で、幸せにしたいと想う人が出来たばっかりなのに?
何で生きなきゃいけないんだろうって、そればかり考えていたバチが当たったのだろうか。神様、あのように考えていたのは少し前の私です。お手元の情報が最新ではありません、今一度データの更新をお願いします。
お願いします……
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