出:くしゃっとした笑顔

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出:くしゃっとした笑顔

「宮野さん、お疲れ様です。そうなんです、3月いっぱいで。今まで大変お世話になりました」  平均年齢の高めな職場でいきなりのイケメンはドキリとしてしまう。普段は挨拶を交わすだけで話すことなどほとんど無い。色白で、スポーツを何かしらやっていたのだろうなと思わせる体つきは、スーツ姿も様になる。襟足は刈り上げで、前髪は男性にしては少し長めだけれど、清潔感のある黒髪。今日はボルドーのネクタイがよく似合っている。ドット柄かと思ったがよく見るとネコの形をしている。狙ってやっているのだろうか。 「残念だなあ。ちょうど新しい部署の立ち上げの関係でこっちに顔を出すことが多くなるのに。これを機に加賀さんとお近づきになろうって企んでたんだけど」  新しい部署の話は聞いていた。何でも時代に乗り遅れてはならぬと、SNSに特化した部署をうちに作るのだそうだ。それはそうと、この人は今何と言った? 「またまたぁ。私もこれから宮野さんと沢山お会いできるって知っていたら辞めなかったんですけどね」    平静を装ったつもりだが、声が上ずってはいなかったか。セクハラだと糾弾するつもりは毛頭ないが、かと言って間に受けたとも思われたくないお年頃だ。 「かわされちゃったか。けど、加賀さんとお話ししたいのは本当です」
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