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「一時はどうなるかと思ったわ」
「山谷さん、すげえ勇気」
「諦めたらそこで終わりだもん、ね?」
先生の机の引き出しの中、無事にゲームソフトを発見した。
山谷さんの探し物がなくて時間がかかり、警備のオッチャンが西校舎にきた。
生徒指導室前で足を止め、上の窓を閉める手を、鍵をかけた教室内部から、息を潜めて隠れ見た。
オッチャンが去った後、今度は東校舎に移動し、そちら側から体育倉庫を目指し、学校を脱出した。
「結局、山谷さんのリップと鏡って、どこにあったんだろう?」
「うん、それはもういいや。仕方ない、新しいの買うし。でも柏崎くんのソフトが見つかっただけでも良かったよ。それにスリルがあって楽しかったよね」
ビクビクしていたのは僕らだけで、山谷さんはなんだか楽しそうだ。
「ねえ、山谷さんも夏休み中、集まってゲームしない? もし良かったら連絡先交換とか」
「ごめんね、私、スマホ持ってないの。夏休み明けたら、また学校で会おうよ」
「そっか。今日は本当にありがと、山谷さんのおかげで助かったよ」
「お? 私、いいことした? それじゃ次会ったらアイスでも奢ってもらおうかな」
家はすぐそこだからと、交差点で彼女と別れた。
「じゃあね、柏崎くん、阿木くん、真中くん、またね~!」
「またね、山谷さん、まったね~!」
「夏休み明け、必ず会おうな」
「気を付けて帰れよ~!」
多分、二人とも僕と同じことを思っているはず。
――彼女にまた会えますように。
僕らの声にこたえるように、信号の向こうでピョンピョン跳ねながら手を振る彼女の笑顔を見たのが最後、一瞬大型トラックが僕らの間を通り過ぎたあと。
「え? 嘘だろ!?」
「消えた?」
「いや、んなわけないだろ」
そこに立っていた彼女の姿は跡形なく消えていた。
顔を見合わせた僕らは悲鳴をあげて夜の町を走ったのだった。
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