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「もう、いい。レンレンはここで遊んでろよ」
僕にしがみつくタケを引き摺るように歩きだすと。
「悪かったって、冗談、冗談」
「やっていいことと悪いことがあるからな」
「もう、やらないってば。そんなに怒るなよ、ショータ。あ、ゲーム大会の日、俺の家でいいぞ? 母さんが、手作りケーキ作るって張り切ってたし」
「ねえ、ショーちゃん。レンレンだって悪気があったわけじゃなくて、ふざけただけだしさ。許してやってよ」
タケはレンレンの母さんが作るケーキに目が無い、僕もそうだけど。
「だったら、もう二度とふざけるなよ」
何とか気持ちを落ち着けたその時だ。
ポロンと微かな音がした。
「え!? なに!?」
せっかく離れたタケが、また僕にしがみつく。
「おい、レンレン、もうやらないって言っただろ!?」
ポロン、ポロロン、それはこの先にある音楽室からの音だ。
「俺、なにもしてないし」
引きつった顔で音楽室と書かれたプレートを見つめるレンレンの様子から確かにふざけている感じはしない。
「だったら……誰が、ピアノを弾いてるの?」
怯えたタケが震えながら声を潜める。
そう、僕ら以外誰もいるはずのない夜の校舎で、鳴り響くピアノの音。
「誰だ!! そこで何してるんだ!?」
恐怖のあまり怒鳴った僕の声に、一瞬だけ鳴りやんだピアノは、突如ジャジャジャジャーンというベートーベンの運命を強く叩いた。
声にならない悲鳴をあげた僕らは、抱き合うように廊下でへたりこんだのだった。
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