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「ごめーん、ビックリさせちゃった?」
女の子の声だ。
ピアノの音が止み、パタパタと誰かが歩く音がする。
月明かりに照らされた廊下の向こう、音楽室から黒い人影が出てきた。
「誰もいない夜の中学校、音楽室から鳴り響くピアノの音、めちゃくちゃ怖いよね」
黒い人影がどんどん近づいてくる。
長い髪の毛をポニーテールにした、僕らと同じくらいの年の女の子が、ニッと笑って「ごめんね」と首をかしげている。
「誰?」
僕にしがみついたまま、手で顔を覆っていたタケは、その指の隙間から女の子を覗いているらしい。
「私? 二年の山谷アキ。あなたたちは?」
「僕らは、全員二年A組の」
「俺は阿木蓮太郎」
さっきまで腰をぬかしていたくせに、立ち上がって爽やかキャラを気取るのは、山谷さんが可愛いからに決まっている。
いつものようなチャラさ全開を取り戻したレンレンは、余裕ぶってウィンクまでしてみせた。
「真中武人です!」
害が無さそうな可愛い子と確認したタケも、現金なことに笑顔で挨拶をしている。
「僕は柏崎翔太、です」
不覚だ、こんな可愛い子に尻もちついてビビってたところを見られたなんて。
ムスッとしてしまった僕の心を覗き見したみたいに、山谷さんはクスクスと笑う。
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