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「結局連れてきちゃったけどどうしようかな」
リュックの中でバスタオルに包んだままのうさぎのことを考えながら漕ぐ自転車はペダルの回転がやけに重く感じられた。一人、また一人と生徒を抜かしていく中でいつもより重いリュックが僕を後ろに引っ張る。坂道でもないのに立ち漕ぎをしている僕はまるで青春小説の主人公のようで。汗をかきながらもう冬になるというこの季節の中を突っ走っていた。
「揺れてたらすいません。もう少しで学校なんで」
もう少しで学校だからなんだと言うのか、自分でも訳が分からないままにうさぎに声をかけつつ自転車を漕いだ。こめかみに垂れる汗が季節を間違えたままアスファルトに落ちる。謎の焦りと疲れで僕だけが真夏みたいに汗をかいては息を切らしている。周りの生徒達と、おそらくうさぎも、みんな手を摩って寒がっているというのに僕だけが真っ赤に火照っていた。
「なんだってんだ本当」
誰にでもなく宙についた悪態は朝のそよ風に連れられて消えてく。何が何だか、ずっと分からないままだ。なんだ?このうさぎは。何故、僕は学校に連れてきている?
ようやく開けた教室のドアはこれまたやけに重く、大きな音を立てて開けてしまったがためにクラス中の視線を集める羽目になった。あはは、と薄い笑いで誤魔化しながら席に着こうとしたその瞬間。
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