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「あっ!」
リュックから飛び出したうさぎが僕を飛び越え教卓に乗ってしまった。やばい、そう思った僕は咄嗟に身を乗り出し教卓まで飛びかかっていた。
「和希なにやってるん?」
「へ?だってうさぎが……」
「うさぎ?まだ寝ぼけてんのか~?」
どうやら僕にしか見えていないらしいこのうさぎは後ろ足でけしけしと顔を掻きながら教卓の上で我が物顔だ。益々どうしたらいいのか分からなくなってきた。僕にしか見えないうさぎになんの意味があるというのだろう?仕方なく抱えてリュックの中へと戻そうとしたとき、聞き覚えのない声が教室に響いた。
「私は泥棒。だから盗みにきたよ。それじゃ、その時が来るまでまた」
うさぎはぴょーんと教卓の上で一回跳ねてそして消えた。僕以外に声が聞こえていた様子はなく、教室の中の様子も特に変わったようには見えなかった。
「泥棒……?」
確か、盗みにきたと言っていた。でもなにを?慌てて財布の中身を確認したが一円も減っていなかった。クラスメイトの田中にそれとなく確認したが田中も同じで、辺りを見渡しても変わった様子はひとつも見当たらなかった。じゃあ何を盗んだって言うんだ?それとも今までの全てが夢の延長、幻覚だったって言うのか?なんなんだ、一体。混乱する頭の中を落ち着かせるために必死に深呼吸をしていると隣の席の恵子が話しかけてきた。
「朝から汗だくだね和希、どしたん~?」
「あ、わっ、悪ぃ、男臭いだろ」
自虐を混ぜつつ放った言葉に返ってきた言葉は意外なもので。
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