2人が本棚に入れています
本棚に追加
改めて教室を見渡すといつもより男子と女子の距離が近いように思えてきた。時折聞こえてくる会話も普段とは少し違うものが多い。僕にとっては違和感だらけだ。スカートを履く男子、スラックスを履く女子、至近距離で話す男女。股を大きく開いて話す女子にネイルを塗り直す男子。全てが僕にはあべこべに見えた。おかしい、こんな世界。僕しか気づいていない違和感は時間が経てば経つほどに濃くなっていく。女言葉を使わなくなった英語の女の先生。代わりに女言葉を使い出した古典の男の先生。頭がおかしくなりそうだ。みんなしてふざけてるならもうやめてくれ。性別が無くなった世界は僕にとっては苦痛でしかなかった。
「なんでだと思う?」
頭に響くうさぎの声。なんで、って。なんで?
ぴょーん、ぴょーんとどこかで聞こえるうさぎの足音。待てよ、この世界をどうにかしてくれ。もう頭がおかしくなりそうなんだ。
「和希~そろそろ授業始めるわよ~」
スカートに身を包んだ体育教師が教科書をヒラヒラさせながら僕の名前を呼んだ。
「なんだよアレ……」
性別が無くなった世界はぐちゃぐちゃで、みんな好き勝手やりやがって、トイレはひとつしか無いし恋バナだって男女一緒にしてるし、みんな好きな格好をしてるのかなんなのかいつもと違った服装で歩き回る。僕が一体何をしたって言うんだ。
仕方なく着いた席でしばらく授業を放置して考える、この世界のこと。
最初のコメントを投稿しよう!