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そう簡単には割り切れなかった。第一僕は男だ。もしかしたら今はこの世界で僕だけが男なのかもしれない。身体の機能はともかく、概念としての男はきっと僕だけなんだろう。それなら何故僕の性別も無くしてくれなかったんだろうか、あのうさぎは。
そこにきっとこの世界を生み出した理由があるはずだ。何か忘れてやしないか、大事なことを。
「……あ」
一週間前、僕は告白された。
男子に、だ。
今こんなふうに世界がおかしくなって、いや、本来のかたち?になって気づくあの頃の自分の言動の浅はかさ。僕は彼になんて言ったんだっけ。確か告白されて照れくさくて、それで……。
『男同士でこういうのはないっしょ。ほら、なんて言うか、友達でいられればよくない?気持ちは嬉しいけど、こういうのはちょっと……』
ガン、と頭を殴られたような気がした。今のこの世界に居れば分かる、いや、この世界にならなければ分からなかった。あの言葉の酷さに。胸が一気に苦しくなって目頭が熱くなった。泣くな、泣くのはきっと僕じゃなくて彼の方だ。
途端、視界が開けたようにこの世界の意味を理解した。勝手に見守ってあたたかい気持ちになっていたスカートのあいつにだって、なんだかんだ理解した気になりつつも「男なのに」スカートを履いて、と言っていた数分前の自分の浅はかさにも気づいた。それだけじゃない。朝からずっと僕は間違い続けてきた。それにやっと気づけたんだ、この世界のおかげで。
僕がすべきことはあのうさぎを探すことでもこの世界を憎むことでもない、あの時の彼を探して謝ることだ。
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