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次の日、漕ぐ自転車は軽かった。リュックの中にはもう何もいないのに何故だか少しだけ重くて、それは今まで僕が落としてきたものなんだと思って受け入れた。受け入れて、もう二度と手放さないと誓った。この重みは手放しちゃいけない重さなんだ。僕がこれからずっと意識していかなければいけない大切な重さ。
背中を押すような強い風の後、ぴょーん、と、どこかでまた何かを盗みに行くうさぎの足音が聞こえた、ような気がした。
「おーい!高岸ー!」
「あ、須山くん!」
僕らにはもう二度と用はない泥棒さん、ありがとう。またねはないけれど、どこかできっとお元気で。
ぴょーん。
ぴょーん、ぴょーん。
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